
第4回 銀座共創ベース
- 2月8日
- 読了時間: 5分
上場企業CFOと語る、経営者の「覚悟」と組織の「良心」
現代の経営において、数字は「結果」でしかありません。しかし、その数字の裏側にある「覚悟」や「物語」を読み解けるかどうかが、企業の生死を分けることがあります。
先日開催された経営者勉強会では、
株式会社CARTA HOLDINGS(東証プライム 3688)取締役CFOの永岡英則氏を講師に迎え、
あおいパートナーズ法律事務所の柴﨑拓己弁護士、
Samurai Lead Bankの稲波寛和氏、
アイケーイープランニングの池嶋裕一氏ら実力派経営者が集結。
「上場企業のガバナンス」から「創業期の参謀論」まで、極めて密度の高い議論が交わされました 。
本記事では、その中から特に経営者が「今すぐ自社に持ち帰るべき」5つの本質的な知見を詳述します。

1. 資本市場との対峙:「論理を超えた覚悟」
上場企業の経営者にとって、資本市場とのコミュニケーションは避けて通れない課題です。特に注目を集めたのは、CARTA HOLDINGS(旧VOYAGE GROUP)がTOB(株式公開買付け)を受けた際の舞台裏でした。
内容等は㊙(すみません)

2. CFO・参謀の正体:なぜ「優秀なだけの人材」は失敗するのか
多くの経営者が「優秀なCFOやNo.2が欲しい」と口にします。しかし、会議で強調されたのは、専門スキル以前の
「誠実さ」と「無限責任の自覚」でした。
創業期CFOは「誠実な雑用係」であれ
創業期のCFOに求められるのは「誰もやらない仕事をすべて引き受ける」姿勢です。名刺の発注から事業計画の策定、泥臭い資金繰りまで、「これは私の仕事ではない」と言わない無限責任の意識。この姿勢があって初めて、社長と対等に物申せる信頼関係が構築されます。
No.2の必須条件は「承認欲求の低さ」
社長は往々にして、直感的で突発的な指示で組織を揺さぶります。これを抑制し、組織の安定を図るのが参謀の役目です [1]。
ここで重要なのは、No.2には「他者からの賞賛を求めない(承認欲求が低い)資質」が適しているという洞察です。自らが脚光を浴びるのではなく、組織の成果に殉じることができる人材こそが、強烈な個性を持つ社長のブレーキ役を全うできるのです 。

3. 財務リテラシーの深淵:決算書を「文学」として解読する
経営における財務諸表(B/S, P/L, C/F)の理解を、永岡氏は「文学作品の読解」に例えました 。
数字は単なる記号ではなく、一つひとつの経営判断の結果が刻まれた「物語」です。
なぜこのタイミングでキャッシュが減ったのか?
この資産の積み増しには、どのような意思決定があったのか?
これらを連結して読み解く訓練を積むことで、企業の過去の過ちや、将来の成長可能性が立体的に浮き彫りになります。
特に事業部長クラスが、単なる売上(P/L)だけでなく、資本コストやB/Sを意識するようになると、投資に対するリターンを「自分事」として捉える「装置」としての経営へ進化します 。

4. 自走する組織の作り方:「問い」がオーナーシップを育む
組織が拡大する中で避けて通れないのが「指示待ち人間」の問題です。会議では、コーチングの理論を実務に落とし込んだ**「問いベースのコミュニケーション」**が解決策として提示されました。
「丸投げ」を「主体性」に変える言葉選び
上司が「目的を伝えて考えてみて」と言うだけでは、部下には「丸投げ」と受け取られかねません 。
そこで、「どうするのが一番いいか?」という問いかけに変えてみます [7]。
部下に「自ら目的を再定義させる」プロセスを挟むことで、当事者意識(オーナーシップ)が芽生え、手戻りの少ない自走型の実行が期待できるようになります。
経営者の「言葉」の力
全社向けメッセージの発信を継続している経営者の事例も共有されました [1]。
小説執筆の経験から学んだ「掴み」や「読後の余韻」を意識した発信は、社員の感情を動かし、思考を促す強力なソフトパワーとなります。

5. ガバナンスの死角:雇用形態と法的リスクのジレンマ
柴﨑弁護士ら実務家を交えた議論で、最も現実的なトピックとなったのが、雇用形態の法的リスクです。
業務委託という「時限爆弾」
業務委託契約であっても、実態として指揮命令下にある場合は「雇用」とみなされます。
上場を目指す過程や、組織が拡大する局面で、不当解雇や残業代未払い請求が噴出するリスクは無視できません。「短時間正社員と業務委託の両建て契約」などの工夫も検討されますが、税理士や社労士からの指摘を免れないケースも多いのが実情です 。
コストから「付加価値」への転換
コールセンターの人員コストなど、直接雇用の重さに悩む経営者に対し、「助成金などのテクニックに走るより、直接雇用だからこそ提供できる高品質なサービスを追求し、それを価格に転嫁すべきだ」という本質的な議論もなされました 。
安易なコスト削減ではなく、「人的資本への投資」としての組織設計こそが、長期的な競争優位を築くのです 。

結びに:平気な顔をして生きる
永岡氏は、自身の経営哲学の根底にあるものとして正岡子規の「病床六尺」にある言葉を紹介しました。
「悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思つて居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であつた」
どんなに辛い事態、不条理な困難に陥っても、「平気な顔をして生きる」と決めること。この経営者の「静かな覚悟」こそが、不確実な時代に社員を安心させ、投資家を納得させ、そして会社を100年続く存在へと押し上げる原動力になるのではないでしょうか。
本勉強会での議論は、単なる知識の共有を超え、経営者としての「生き方」を問う時間となりました。



